2021年5月13日
展示情報

5/6-6/3 杉浦 藍先生 個展

「彫刻表現の基礎」ご担当の杉浦藍先生の個展が行われています。

『誰かの旅、知らない場所』
会期:5/9[日]- 6/3[木]
時間:月ー木…11:00-17:00、日…11:00-18:00
(金、土、祝、20日、31日休)
会場:second2(〒185-0012 東京都国分寺市本町 4-12-4 1F (103))
詳細はこちらから
second02.com/top.html

思えば、学生時代に旅行へ行き始めた頃は旅先からポストカードを送っていた。
観光地のおみやげ屋さんで良さそうな写真のポストカードを選び、家族などに楽しく旅をしていることを知らせる、はたまた自分へ帰国後に旅の思い出を引き出すためのツールとして、ポストカードを送った。
いつの旅でも自分が訪れた旅先は、時間を過ごすにつれすっかり身近な場所に感じた。
しかし、ポストカードの中にうつるその場所は、何か特別な何処かのように凛と胸を張っているようにも見えるし、それが余所行きに感じて少しおかしくも見えた。
今ではSNSに旅の映え写真をアップするだけで旅の思い出を共有し放題である。
そもそも、旅の思い出を一緒に行ってない人に話し伝える時に、聞いてくれている人との間に必ず温度差が発生しているのだから、旅で感じた思いを共有するのはなかなか難易度の高いことなのだと思う。
誰かに送るにしろ送らないにしろ、かつて観光地でポストカードを買っていた自分は、訪れた場所でとびきりの時間を過ごしていたに違いない。
そんな私の想いは、おかしみを含んだポストカードと一緒に、大事な人への旅の便りとして空を飛んで行った。
そして今、偶然手元にある誰かが誰かへ送ったポストカードを眺める。
その場所について知ることはポスト カードに載っている風景写真と裏面のメッセージのみ。自分が行った場所でもなく、この旅をした人の話も 聞いていないため、私とポストカードにある場所との関係は偶然出会ったということだけだ。
私はいつもいる部屋の中でポストカードの表層にある風景に目を凝らし、そのポストカードにうつる何処か知らない遠くの場所との思い出を作ろうとしている。
いつかその場所に行ったときに、かつての旅先と同じように親しみの持てる場所になるように。

杉浦 藍
 
 
(展覧会HPより転載)